平成22年度 総会 会長挨拶

   青葉が香るすがすがしい季節を迎えた。新役員、代議員の皆様には、新年度がスタートしたばかりの慌ただしい中にもかかわらず、全道各地からお集まりいただきありがたく思う。また、本日は公務ご多用の中、北海道教育委員会教育長 高橋教一(のりかず)様、北海道都市教育長会会長 北原敬文(たかふみ)様、講演をいただく北海道教育委員会学校教育局長 吉田一昭(かずあき)様をはじめ、本会が日頃からご支援をいただいている教育関係団体の皆様、そして歴代の道小会長及び役員の皆様のご臨席を賜り感激している。
 北海道小学校長会は、「正論を以て、正道を歩む」という理念のもと、半世紀にわたり、校長の職能向上及び本道教育の振興・発展に多大な貢献をしてきた。そして今年度は、これまでの成果を生かし、札幌市において第62回全国連合小学校長会研究協議会北海道大会を開催する。全国から3000人の参加者を迎えるが、「分科会の充実こそが最大のおもてなし」を合言葉に、本道の校長の底力を全国に発信できる大会にすべく、開催地札幌市小学校長会が中心になり心を一つに準備を進めている。
 私は、このような中、昨年度に引き続き会長を務めることになった福田である。微力ではあるが、小学校長の職能向上と本道教育の充実発展を目的とする本会がますます発展するよう、全道1225名の会員の皆様と共に全力を尽くす所存である。皆様のご指導ご支援を心からお願い申し上げる。

 さて、今年度の道小の活動について申し述べる。
 道小は、本年度も昨年度からの継続である「教育者としての信念と経営者としてのビジョンを併せもつ校長会」「リーダーシップを発揮する校長会」をめざして、諸活動の一層の充実を図りたいと考えている。
 学習指導要領の移行措置最終年を迎えたが、既に総則や外国語活動などが先行実施されており、校長会として本年度は次年度からの全面実施に向けて万全の体制を確立することが最大の目標になる。その一方で、現在、本道教育は極めて厳しい課題に直面していることも事実である。一つは、全国学力・学習状況調査及び体力・運動能力調査結果の厳しい現実である。そして、もう一つは、公務員としての服務規律の在り方に端を発する本道の公教育に対する道民の不安にどう答え、信頼を回復するかという現実である。また、市町村合併や過疎化・経済状況の悪化、少子化の進行等に伴い、本道では今年度小学校31校が統廃合された。さらには、家庭教育とも関連して「いじめ・不登校・児童虐待」の問題も大きい。

 北海道はとかく地域性や経済的なマイナス面ばかりが強調される傾向があるが、校長会は教育を取り巻く現状に大きな危機意識を持ちつつも、マイナスをプラスに転じる気概をもって教育への志を高く掲げ、力強く前進していきたいものである。私は、そのためのキーワードは、「教育の質の向上」であると思う。各学校で毎日の授業の質を高め、子どもの成長の姿で教育活動全体を評価し改善する取組みであり、同時に、校長が「教育の質の向上」という観点から、教育改革や本道教育課題の本質を見極め、それらを学校改善や教職員の資質向上に生かし、最終的には子供の成長を促す力に変えていくことである。校長が、教育者としての信念に基づいて教育課題を構造的、総合的に見極め、経営者としてのビジョンをもってそれを各学校の経営に具現化させたいものである。そのためには、校長会として各地区の研修を活性化し、一人ひとりの校長が自信をもって学校経営に当たれるようにしたいものである。

 また、道小として、調査・情報提供や提言・意見表明等を積極的に行うことも大切にしたい。各地区の理事を中心に連携し、各学校の生の声を確実に把握するとともに、教育者としての目で分析・考察し、ビジョンをしっかりと描いて行動できる力強い校長会でありたい。

 併せて、今年度は、「リーダーシップを発揮する校長会」としての取組みを一層強化したいと考えている。本道教育には、校長会として取り組まなければならない重要課題が数多くある。一つ一つの課題について、校長会として積極的に情報交流を行い、優れた取組みを学び合いたいものである。

 一つは、移行措置にかかわっての教育課程の編成・実施・評価、そして学習評価への取組みである。簡素で効率的な評価の具現化、評価規準の作成が求められる。
 二つは、本道児童の体力低下への対応である。30年前の小学校5年生が一日に歩く歩数は23000歩だったが、昨年の調査では10000歩に減少していたとの調査報告もあり運動不足は深刻な状況にある。また、読書や家庭学習の習慣形成は、学力の問題とも極めて関連が大きい。
 三つは、いじめや犯罪、トラブルの温床になっているインターネット上の「学校裏サイト」、「いじめ・不登校・児童虐待」等の問題である。教職員の指導力の向上と校内体制の確立が求められる。
 四つは、特別支援教育推進にかかわる課題である。通常学級に在籍している発達障害児等への的確な対応が求められる。
 五つは、勤勉手当の査定制度、学校職員評価制度の趣旨に基づいた対応である。
 六つは、校長が自らを厳しく律し、服務監督権者として事件・事故絶滅への徹底した服務管理を行う必要性である。子供を守り学校を守るためにも、校長は指導監督に逡巡することは許されない。

 これらの重要課題の克服には、いずれも校長の強いリーダーシップが必要不可欠である。私は、校長のリーダーシップとは、教員個々の力量を学校というチームとしての力に高めることであると考えている。それには、校長自らが、学校として取り組むべき方向性を教職員に明快に示すと共に、様々な教育活動を具体化し、組織・体系化することが必要である。また、そのことこそが学校の教育力を高める最大の方策であることを、校長会として確認し合い、研修を深めたいものである。
 ところが学校では、ともすると、努力することや継続することの大切さが軽くとらえられ、「空気を読む」など、人間関係をうまく保つことに偏重するかのような風潮が続いている。しかし、いくら空気を読んでも自分がなければ空回りするように、教職員への対応も追従や迎合ばかりではならない。私は、「教育者としての信念と経営者としてのビジョンを併せもち、リーダーシップを発揮する校長」を目差すことにより、確固たる信念に裏打ちされた学校経営が可能となり、子供の成長の姿を保護者や地域に自信をもって示すことにつながり、道民の負託と信頼に応えることにもなると確信している。

 道小の教育研究大会は、今年度は全連小北海道大会と兼ねて札幌で開催される。冒頭でもふれたように、「分科会の充実こそが最大のおもてなしである」を合い言葉に、学校経営の責任者である校長の果たすべき役割と指導性を究明すべく準備を進めている。また、大会二日目に開催されるシンポジウムは、「ふるさと 夢と希望そして挑戦」と題して、動物の行動展示で全国的に有名な旭山動物園小菅正夫前園長、赤字ローカル線対策として道路も線路も走れるDMVを開発したJR北海道柿沼博彦副社長、過疎の町赤平に住み北大と共同で純国産ロケットカムイを開発した植松電気植松努専務に登壇をお願いしている。北海道を代表する豪華なシンポジストとなったが、三人の生き方を通して、ふるさとに対する誇り、そして一見マイナスと思われることをプラスへと転じる気概とアイディアなど、興味深いお話しを伺えるものと期待している。

 以上、校長会としての抱負を述べたが、これらはいずれも道教委・市町村教委との信頼関係があってはじめて成立するものである。これまで同様、道小が学校の生の声をしっかりと伝えながら、よりよいものを互いに求め合うパートナーシップを大切にしていきたい。
 教育は未来をつくる営みと言われるが、教育への志と信念なきビジョンは空虚であり、ビジョンなきリーダーシップは空論にすぎない。校長会として、教育の営みの崇高さと職責の重さを互いに再認識し合い、教育への志を高くもって北海道、そして地域の宝である子供の教育に当たりたいものである。
 ご来賓、教育関係諸機関の皆様に今後とも本会の発展のためにご支援をお願い申し上げると共に、会員の皆様のますますのご健勝を祈念し挨拶とする。