大会主題・研究課題趣旨説明
           北海道小学校校長会 研修部長 谷口 秀文
 今日,様々な分野において世界的な構造転換が進む中,我が国は,震災復興や原発事故対応,さらには,少子化・高齢化やあらゆる分野におけるグローバル化の進展など,社会が激しく変化し先行きが見えにくい状況にある。
 そのような中,国においては第2期教育振興計画が閣議決定され,その具現化が進められようとしている。また,教育再生実行会議から数次にわたる提言がなされ,新たな時代の要請に応える学校教育の在り方と方策が検討されている。このような国の動向を注視しつつ,子どもたちが自主的に社会に参画し,相互に支え合いながら,持続可能な社会の一員として,自らの役割を果たすために必要な力を養うことも,重要な課題となってきている。
 また,小学校においては,未来社会の形成者の育成を目指す教育のイノベーションの創出を図るため,「生きる力」を育む教育課程の編成・実施・評価・改善と組織的・計画的な推進,きめ細やかで質の高い指導の充実などが求められている。
こうした国民の負託に応えるために,我々校長は学校の自主性・自立性を発揮し,夢と希望をもち,たくましく生きる子どもの育成のために,「生きる力」を育む活力ある学校づくりを強力に推進する責務がある。
 このような現状認識に立ち,全連小の新大会主題『新たな知を拓き人間性豊かな社会を築く日本人の育成を目指す小学校教育の推進』との関連性を踏まえ,北海道の地域性に根ざした研究と実践,校長としての職能の向上をより一層図るため,大会副主題を「北の大地から世界を見つめ新しい社会の形成に向けて挑戦する子どもを育む学校経営の推進」と設定した。
 第56回北海道小学校長会教育研究渡島・北斗大会においては,これまでの研究の成果と課題及び研究の継続性を大切にしながら,研究の深化を図るとともに, 新しい大会主題・副主題・分科会構成で展開される本大会から次期大会へのつながりも図らなくてはならない。

 本大会は,学校経営の責任者である校長の立場から,時代の潮流をグローバルな視点から鋭くとらえ,北海道の地域性を生かした新たな可能性の開拓とビジョンの構築,新たな知を拓き人間性豊かな社会を築いていく子どもを育む学校経営の推進について究明しようとするものである。

 第1分科会「経営・ビジョン」
 研究課題は「創意と活力に満ちた学校経営ピジョンと校長の在り方」である。校長は,一人一人の子どもに「生きる力」を育む教育の実現に向けた教育者としての信念と学校の最高責任者としての経営理念を基盤に据えながら,子どもたちが生きる未来社会を見据えた明確な学校経営ビジョンをもち,活力ある学校経営を行うことが重要である。分科会においては,学校改善に向けて絶えず評価・刷新しながら新たな時代の学校教育に求められる使命を意識し,創意と活力に満ちた学校経営を推進していくための校長の役割と具体的な方策を明らかにする。

 第2分科会「組織・運営」
  研究課題は「学校経営ビジョンの実現と活力ある組織づくりにおける校長の在り方」である。学校においては,今後の教育の方向を見据えた運営組織の構築,教職員一人一人が自らの使命感を自覚し学校経営の担い手としての意識高揚を図ることが重要になってきている。分科会においては,教職員がもつ資質・能力を引き出し高める組織の活性化,活力ある学校運営に資する校内組織の在り方や体制づくりを図るための校長の役割と具体的な方策を明らかにする。
第3分科会「評価・改善」
 研究課題は「教育改革を進める学校づくりと評価における校長の在り方」である。今,教育を巡る状況と子どもの未来を見据え新たな知を拓く資質・能力を育成する教育を創造するための学校経営の在り方が重要になってきている。分科会においては,学校関係者評価への保護者・地域の参画,学校評価と人事評価の二つをツールとした組織マネジメントの改善などを通して,学校における教育の改革を着実に推し進めていくための校長の役割と具体的な方策を明らかにする。

 第4分科会「知性・創造性」
 研究課題は「知性・創造性を育む教育課程の編成と校長の在り方」である。21世紀を生きる子どもたちに,困難に立ち向かい,たくましく生き抜く力を育むことや基礎的・基本的な知識や技能の習得,問題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力などの育成は学校として重要な役割である。分科会においては,これらの資質・能力の育成を図り,主体的に学習に取り組む態度の育成に向けた創意ある教育課程の編成・実施・評価・改善に向けての校長の役割と具体的な方策を明らかにする。

  第5分科会「豊かな人間性」
 研究課題は「豊かな人間性を育む教育課程と校長の在り方」である。子どもたちが夢や希望をもって未来を拓き,人間としてより良く生きようとする力の育成や他人を思いやる心、,生命や人権を尊重する心,正義感や公平さを重んじる心の育成など,心の教育にかかる教育実践を推進することはますます重要になってきている。分科会においては,道徳教育や人権教育の充実とともに,家庭や地域などと連携・協働した取組を実現し,人間性豊かな日本人を育成するための教育課程の編成・実施・評価・改善に向けての校長の役割と具体的な方策を明らかにする。
  第6分科会「社会形成能力」
 研究課題は「社会形成能力の育成を目指す教育課程の編成と校長の在り方」である。将来の社会を形成する役割を担う子どもたちが,自己の置かれている状況を受け止め,各教科などで身に付けた知識や技能などをもとに,より良い社会の形成に向けて働き掛けようとする意識が重要になってくる。分科会においては,他者と協力して社会の様々な活動に主体性をもって積極的に参画し貢献しようとする意欲や,課題を解決していく力・態度を育む教育課程を編成・実施・評価・改善していくための校長の役割と具体的な方策を明らかにする。

 第7分科会「現職教育」
 研究課題は「教職員の人間性と専門性を高め,意識改革を促す現職教育と校長の在り方」である。教職員の資質・指導力の向上を図り,展望や参画意識をもたせ,学校の教育力を向上させることは学校力向上に欠かせない要件である。分科会においては,教職員一人一人が自信と意欲をもって教育実践に取り組むための研究・研修体制の確立と学校の中核を担うミドルリーダーや次代の学校経営を委ねる管理職人材を発掘し,学校現場において意図的・計画的に育成していくための校長の役割と具体的な方策を明らかにする。
 第8分科会「学校安全」
 研究課題は「命を守る安全教育の推進と校長の在り方」である。安全・安心な教育環境を確保し,子どもたちが災害から自分の命を自ら守る危険予測・回避能力など,自ら判断し行動できる力を身に付けられる安全教育を推進することは,学校教育にとってますます重要になってきている。分科会においては,教育活動全般を通した組織的・計画的な指導を基盤に,家庭・地域・関係機関と連携・協働を図りながら子どもの命を守るための体制づくりの推進に向けての校長の役割と具体的な方策を明らかにする。


  第9分科会「健全育成」
 研究課題は「児童の健全育成と危機管理の推進における校長の在り方」である。全ての子どもの人権が尊重され自己実現の喜びを味わい,安全で安心できる学校の経営が求められている。また,学校の組織体制の見直し,子どもと向き合う時間の確保,学習指導の改善など,健全育成の充実も求められている。分科会においては,教職員が連携・協力して取り組める体制の確立,家庭や地域・関係機関との密接な連携・協力体制の構築に加え,様々な健全育成上の課題に対して組織的な対応を進めるための校長の役割と具体的な方策を明らかにする。
  第10分科会「健康」
 研究課題は「たくましく生きる心と体を育む健康教育と校長の在り方」である。今の時代,生涯を通して心身ともに健康で活力ある生活を送り,たくましく生きていくことを目指し,子どもたち一人一人が健康について関心を高めることが重要である。分科会においては,自らの健康を適切に管理し改善できる能力を培うため,望ましい食生活や規則正しい生活習慣の態度形成など,健康教育の推進とそのための学校体制の確立に向けての校長の役割と具体的な方策を明らかにする。

  第11分科会「環境」
 研究課題は「自然環境を大切にする心と実践力を育てる環境教育と校長の在り方」である。これからの時代,環境についての正しい知識や見方・考え方を身に付けるとともに,身近なところから環境問題の解決に向けて具体的な行動をとることができる子どもの育成が求められている。分科会においては,体験活動を通して,自然環境を大切にする心と環境保全のため主体的に行動する実践的な態度や資質・能力を育てる環境教育の推進や,家庭・地域・関係団体との相互の連携による実生活との関連を生かした体験活動を充実していくための校長の役割と具体的な方策を明らかにする。
  第12分科会「自立」
  研究課題は「自立や社会参加の実現に向けた特別支援教育の推進と校長の在り方」である。自分らしさを大切にしながら,夢や希望をもって「自立する力」を育むことは,これからの時代を生き抜くうえで重要な課題である。分科会においては,一人一人の発達や障害についての実態把握や,それに基づいた指導目標や指導内容・方法,教育的ニーズに応じた指導計画,関係機関との連携による「個別の教育支援計画」の作成など,適切な理解と認識に立った校内指導体制の確立や,関係機関と連携推進していくための校長の役割と具体的な方策を明らかにする。
 第13分科会「社会性」
研究課題は「勤労観・職業観を育むキャリア教育の推進と校長の在り方」である。将来出合う様々な課題に,柔軟かつたくましく対応し,社会人・職業人として自立していくことができる子どもの育成は,ますます重要性を増してきている。分科会においては,自立した社会形成者育成の観点から,働くことの意義について実感を伴いながら理解を図るとともに,他者と関わる力の充実,社会人としての基礎的な資質・能力の育成,発達に応じた指導の継続,家庭・地域と連携した教育など,キャリア教育推進に向けた校長の役割と具体的な方策を明らかにする。