会長挨拶   北海道小学校長会 会長 中易 まさき




































































 新年、あけましておめでとうございます。
 道内の各学校においては、校長先生の力強いリーダーシップのもとで多くの課題と向き合い、道を切り拓きながら新年を迎えられたことと思います。
 ところで、昨年の12月に発表されましたが、2013年を表す漢字は「輪」でした。
 17万290通の応募のうち、「輪」は最多の9518通(5・59%)だったそうです。輪に決まった理由は、2020年東京五輪の開催決定や、富士山の世界文化遺産登録、サッカーW杯への日本代表の出場決定など「日本中が輪になって歓喜にわいた年」であり、台風など相次ぐ自然災害にも支援の輪が広がったことなどが理由に挙げられたそうです。
 清水寺の森貫主は「『輪』には、大勢の人が手を握りあい円滑に回転していくという意味がある。皆が譲り合い支え合って、来年も震災復興など輪のつながりに努力していきたい」と話していましたが、新聞報道には街の違った声も載せられていました。

40代の会社員の男性は「忍耐の『忍』です。やっぱり人生、耐えないといけないから。仕事面もいろいろ、家庭でもいろいろ。やっぱり、耐え忍んで、さらに自分を成長するという」と話したとありました。
 さて、去年の打ち出された教育施策を見てみると、いじめ防止対策推進法の施行や教育委員会制度改革、学力学習状況調査の実施要領の変更、土曜授業等、英語・道徳の教科化など、次から次へと様々な施策が打ち出され、一つ一つを十分に検討する暇もなく次の課題が押し寄せてくるという状況でした。
 それを、漢字一字で表すのは難しいのですが、あえて挙げるとすれば転換期の「転」ではないかと思います。ところで、道小の今年一年を表す漢字は、何になるのでしょうか。少なくとも、暗い(暗)とか、辛い(辛)ではなく、上昇の(昇)とか、活性化や活力の(活)であってほしいものです。
確かに、全国学力学習状況調査、全国体力・運動能力調査等の結果等、極めて厳しい現実に直面しているのは事実です。しかし、結果に一喜一憂するのではなく、校長会自らが、本道の子ども達の未来を切り開くためにどのような学校経営を展開すればよいのかを捉え直し、長期的な展望を持って「ひるまず」「おそれず」「あきらめず」毅然として取り組むことが、いま大切なのではないでしょうか。
 また、過疎化や経済状況の悪化等に伴って新年度小学校23校が統廃合されます。校長会組織は縮小の一途です。しかし、改めて校長会組織の活性化と組織力の充実に努め、本道が抱えている諸課題に対処していきたいと考えています。

 さて、新しい年を展望して、以下、4点についてお話しいたします。
 1点目は、来年度の文教予算についてです。
 教育再生実行会議や下村文科大臣が力を入れていた施策、例えば、土曜授業・土曜学習や道徳教育の充実などには、予算的な裏付けがなされた一方で、文科省が要求していた36人以上学級解消に向けた3800人の定数改善要求が、政府予算案には反映されませんでした。子どもと向き合う時間の確保や個にかかわるきめ細かい指導の充実に向けて、35人以下学級の実現は欠かせませんが、今年度の予算編成を見る限り、現行の2年生が実施しているような加配による35人学級の実現は難しく、義務教育標準法の改正がない限り実現することは非常に難しくなったと言わざるを得ません。今後、全連小とも連携し、どのような取組を展開していったらよいのか、検討しなくてはなりません。

 2点目は、各学校が、地域性や歴史的文化風土など様々な教育条件の違いを背景に編成している教育課程の確実な実施と評価・改善についてです。教育課程の編成に責任をもつ校長は、目の前にいる子どもたちの姿で自校の教育を捉え、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」を三位一体とする「生きる力」を育むための教育課程の編成・実施・評価・改善に全精力を注がなくてはなりません。
 特に、「確かな学力」「学力の質の向上」は、今一度、全ての校長が真摯に向き合わなければならない喫緊の課題です。教育の役割は、子どもたちが将来社会に出た時、周囲の人たちと適切に関わりながら自律して生き抜いていくことができる力を育てることであり、「学力の質の向上」はその力を支え子どもの明日を切り拓くための土台であることを、私たちは改めて問い直す必要があるのではないでしょうか。
 学力調査における本道の子どもたちの状況を見ると、「知識」に関する問題に比べて「活用」に関する問題における課題が大きいと言われ、知識や技能を確実に習得するとともに、思考力・判断力・表現力の育成が強く求められています。つまり、行きつくところは授業の改善・充実なのです。
 学力調査における本道の子どもたちの状況は、現場の努力がしだいに成果となって表れてきています。その成果を確実なものに育てていくためには、達成感を味わうことができる日々の授業の充実を地道に積み上げていくしか道はありません。今日飲めば、明日効果が表れるような特効薬はないのです。
 学校が一つ一つの課題に丁寧に取り組んだり、教師が創意工夫を凝らした授業を作り上げたりするには、時間がかかります。全道の各学校が、地域の歴史や文化を背景に、保護者・地域と力を合わせ、自ら授業改善に、積極的に、そして粘り強く取り組めるように、「学校の力」を高めることが校長会の責務であると考えています。

 3点目は、いじめ問題への対応についてです。
文科省が12月10日に公表した平成24年度の問題行動調査の結果によると、本道の小学校におけるいじめの認知件数は1684件に上っています。昨年度が1261件でしたから、400件以上の増加です。文科省が説明しているように、いじめ自体が増加したわけではなく、敏感になったために掘り起こされた件数が上乗せされたと考えることができます。つまり、今年度の1684件という数値が、より実態に近い数とも考えることができるのです。
全道の小学校数1132をはるかにしのぐ件数を前に、私たち校長は、改めて子どもたちをいじめに向かわせない学校づくりに取り組むことを強く決意しなくてはなりません。いじめ防止対策推進法が成立し、文科省からいじめ防止基本方針が通知された今、いじめ防止対策の軸足は学校に移されたと言って過言ではありません。
 私たち校長は、リーダーシップを発揮し、この3学期中に、子どもたちの意見を取り入れたり、地域・保護者等の参画を得たりして、学校いじめ防止基本方針を策定し、ホームページ等で公開するとともに、26年度4月当初から実質的にいじめ防止対策が機能するように、組織的に取り組まなくてはなりません。

 4点目は、道小組織の活性化と充実についてです。
 後ほど道小の組織あり方検討委員会から中間報告がありますが、道小の活動の見直しと充実はこれから数年にわたって検討を続けていかなくてはならない重要な課題です。
例えば、本道においては、小学校の統廃合が進み平成10年に1500を超えていた学校数は、来年度1109校まで減少します。当然、道小の会員数も減少し、会務の推進にいくつかの課題が表れていることは否定できません。一方、道徳や英語の教科化やいじめ問題への対応等、学校に押し寄せる様々な教育課題に対応するため、道小の活動は一層重要性を増しています。また、教育の質の向上や教育環境の整備等、地区校長会や道P等教育関係団体と連携を深めながら要望活動の充実を図っていくことも重要な課題です。
したがって、今こそ活動の無駄を省き前例踏襲的な活動から抜け出す柔軟な発想によって、新たな体制を構築しなくてはならないのです。
 また、校長の職能向上を目指す校長会として、教育研究大会のさらなる充実・発展を図ることも重要な課題です。
 来年度は、日高校長会の主管により新冠『レ・コード館』を主会場に教育研究大会を実施いたします。
 日高校長会は、全道20地区の校長会のうち最も会員数の少ない校長会です。しかし、先日、日高地区の関係機関に表敬訪問させていただきましたが、お会いした皆さん全てが教育への志高く情熱にあふれる方ばかりでした。きっと、日高校長会の皆さんは、少人数であることをプラスに転じ意思疎通や連携の良さによって少人数でも大会を運営できるという気概を示してくれるでしょうし、道小としても、組織的な支援を行ってかなくてはならないと考えております。

 以上、今年の道小の活動を展望し、4点について述べさせていただきました。
 本日は、他にも、平成26年度活動計画、研究大会の分科会趣旨の再確認等についても審議いただきます。また、道教委義務教育課辻課長より行政説明をいただくことになっています。
大きな変化の時代に手をこまねいているだけでは何も生まれません。また、黙っていては一歩も前には進みません。初心忘るべからず。志を高く掲げ、全道の校長先生、教育関係者、教育関係機関の皆様と共に、前向きに歩みを進める一年にしたいと願っています。
 以上、第5回理事研修会に当たり、新年のあいさつといたします。