中易会長

 早いもので、3月を迎えようとしている。あれほど厳しい寒さと大雪に見舞われた北海道も、今週は少し気温が緩んだようである。木々の芽も、少しだけ膨らみだす季節を迎えたような気がする。副会長・理事の皆さんには、年度末を控え、学校評価・新年度計画の策定と大変忙しい時期にもかかわらず、全道各地区からご参集いただいたことにお礼を申し上げる。
 いじめ防止対策推進法の成立をはじめとして教育に関わる様々な改革案が次々と出され、それに対する対応を迫られるだけでなく、多様化する生徒指導、肥大化する保護者からの要望など山積する教育課題に対する取組を求められる中、この1年、副会長、理事の皆さんと共に、本道教育の諸課題解決に向けて積極的に取組みを進めることができたことを大変光栄に思っている。この場をお借りして厚くお礼申し上げる。
 理事研修会は、今日で6回目を数え今年度の最終を迎えた。新年度に向けての道小活動の基本方針などについて検討いただき、その内容を5月の総会に提案することになる。よろしくご審議をお願いしたい。
 さて、この1年を振り返りながら、5点について述べる。
 1点目は、学力・体力向上の問題についてである。
 平成25年度の教育活動も残すところあと1か月となった。各学校においては、今年度の教育活動の評価と次年度の教育課程の編成に全力を傾けていることと思う。
 道小は、地区校長会と連携しながら、子どもたちが将来どのような状況においても雄々しく生きぬいていける力を身に着けるため、各学校が教育活動の充実に努め子どもたちと真摯に向き合うことができるよう教育環境・教育条件の改善に、今後とも全力で取り組んでいかなくてはならないと考えている。
 2月18日、道教委より「全国体力・運動能力調査」の北海道版の結果報告書が出され、全道版とあわせて管内別の詳細なデータが公表された。調査結果は、学力と同様、本道の子どもたちが抱える体力・運動能力に関わる厳しい現実を示している。
 将来にわたって健康的な生活を送るために体力・運動能力や望ましい運動習慣を身につけることは、子どもたちが自らの手で明日を切り拓いていく力を獲得することにつながる。そして、その力を培うことは我々教師の責務であり学校の使命であることは間違いない。
 確かに、子どもたちを取りまく環境には大きな差があり、地域の状況も様々である。少年団活動が盛んな地域もあれば、それが一つもない地域もある。スクールバスが校門まで乗りつけほとんど歩かずに登校する子もいれば、都市部であっても数キロの道のりを歩いて登校する子もいる。



 しかし、そうした違いや差が地域や家庭にあったとしても、子どもたちが校門をくぐったら責任は学校にある。地域や家庭の違いや差を乗り越える創意・工夫のある教育課程の編成や学校改善プランの見直しに、主体的に取り組むことが重要なのである。
 道教委によると、小学校における一校一実践の取組は100パーセントの実施率だという。したがって、全道の各学校では、校長先生のリーダーシップのもと、マイナスをプラスに変える柔軟な発想で、子どもたちの体力・運動能力の向上に向け、様々な取組を展開してきていることは疑問をさしはさむ余地のないところである。
 したがって、子どもたちの体力・運動能力の問題を真摯に受け止め、子どもの未来を支えるそれらの課題に全力を注ごうと考える各校長の思いを、組織としての活動につなげ、子どもと向き合う全ての教職員が同じ認識に立って取り組んできたことと思う。
 また、各学校が、具体的な目標を設定した学校改善プランに基づき、きめ細かな取組を続けてきた成果は、次第にあらわれてきていることは言うまでもない。今後、学力・学習状況調査をはじめとして各種調査結果の精緻な分析を基に、教育課程や学校改善プランを見直し、それを地域・保護者に具体的に丁寧に説明し、一体となって取り組む機運を校長のリーダーシップのもとに創出することが重要である。

 全道各小学校における教育の成果は、子どもの学びの姿・育ちの姿によってのみ判断される。「学ぶ楽しさ」「運動する喜び」を実感する授業改善や生活改善を積み重ね、子どもたちが自らの目標に向かって努力する姿を求めたいものである。
 目の前にいる子どもの姿は、良くも悪くも我々が「育てた結果」である。「すべては子どもの姿に表れる」ことを肝に銘じ、全教職員が同じ認識に立ち、組織としての統一的な活動を推進するように、校長としての指導性を発揮することをお願いする。
2点目は、学力・学習状況調査の結果の公表にかかわってである。
 すでに26年度の実施要領が示され、市町村教委の判断で結果が公表できるとされた。
 2月7日に道教委へ結果の公表にかかわる要望書を提出したところである。道小・道中としては、説明責任の観点から、学校が地域・保護者に様々な方法で丁寧に説明することは学校の責務であると考えでいる。しかし、各校における公表の方法や内容は、自校の取組や地域の状況を十分に把握している校長の判断によることが重要と捉えている。したがって、実施要領の中で『市町村教委の判断で各学校の結果を公表できる』とされたことに対しては、教育上の負の影響もあることを十分考慮し慎重な判断を要望したところである。また、今後公表を考えている市町村教委においては、各校の校長と事前に相談することになる。地域や学校間の序列化や過度な競争を招かないように、個別の校長だけでなく地区校長会が積極的に市町村教委と話し合い、より良い公表の仕方を模索してもらいたい。

 3点目は、いじめ・体罰防止の取組についてである。
 文科省から12 月10 日発表された平成24年度北海道のいじめ認知件数は、1,684件にのぼる。依然として、少なからぬ子どもたちにとって、安心して楽しく豊かな学校生活を送る環境が保障されていないことに、校長会として強く責任を感じる。我々校長は、いじめの問題に対する取組を、子どもの「心と命の安全」に対する取組と捉え、それと向き合う組織体制を構築することが急務であることを自覚しなくてはならない。
 国段階でいじめ防止対策推進法やいじめ防止基本方針が策定されたことを受けて、今後のいじめ防止対策の取組は軸足を学校に移した。いじめは、どの学校においても起こりうる可能性がある。そのことを常に心に刻み、いじめを許さない学校づくりに危機感をもって臨むことが校長の責務である。同時に、一人一人の教員が、子どもの発する声なき声やサインを敏感に感知し、子どもたちの悩みを親身になって受け止めるように、それぞれの学校においては、今年度中に「いじめ防止基本方針」を策定し、校内組織の設置について検討を加え、26年度4月当初から活動することができるようにすることが重要である。今年度の残された時間は少ないが、是非各学校において具体的に取り組んでもらいたい。

 4点目は、4年目を迎えた地区校長会活性化支援事業についてである。今年度も、各地区校長会で意図を十分に踏まえ道外研修を実施していただいたことに感謝する。道小ホームページにレポートが公開されているが、大変興味深く拝見した。また、各地区からテーマごとに、各学校の優れた事例を募集したが、学力向上・体力向上に関わる取組、豊かな心を育てる取組、食育や健康教育・地域との連携など、素晴らしい事例が道小ホームページに掲載されている。各地区でぜひ有効に活用し合いたいものである。
 ただ、後ほど組織の在り方検討委員会から報告があるが、この地区校長会活性化支援事業という活動自体、会員減による諸般の状況から維持することが困難な情勢にある。今後、山積する教育課題に取り組むためには、道小の活動がますますその重みを増してくることは間違いなく、活動の充実・発展を第一に考えながら、組織の見直し・スリム化を図らなくてはならない。この一見相反する二つの課題に、組織としてどのように取り組んでいくか、副会長・理事の皆さんの慎重なご審議をお願いする


  5点目は、道中をはじめとする教育関係団体との組織的な連携についてである。
以前から連携している道中に加え、道小は昨年度から道Pなど教育関係団体と組織的な連携を強めている。本道における教育諸課題に対する取組は、学校を主体としながらも、社会全体で子どもを守り育てていく観点から、家庭・地域との連携を推進する必要があるのは言うまでもない。今後、道中・道Pなどと、本道教育の課題について率直に議論し、共通理解に基づいて積極的に発信していかなくてはならないと考えている。
 また、道教委の施策に対し、道小として意見や要望を求められることも多くなってきている。理事の皆さんには、時間のないなかで意見の集約をお願いする等、無理なお願いをしていることに大変申し訳なく思っている。ただ、今後、緊迫化するだろう教育情勢を考えても、道小としての意見を伝えることは、ますます重みを増すだろうと考える。各地区校長会の、ご理解とご協力をお願いする。


 最後になるが、今年度「志高く、信頼と協働に基づき共に進む校長会」を目指し、全道20地区の校長会の皆さんと思いを一つにして様々な活動に取り組むことができたことに、心から感謝したい。これからも、北海道の子どものために、全ての学校が日々の授業の質を高め、子どもの成長の姿で各学校の教育活動を評価し、改善していきたいものである。そのためにも、「正論をもって正道を歩む」という道小の基本理念を心に深く刻み込み進んでいかなくてはならない。
 今後とも道小の活動がますます充実したものになることを確信して挨拶とする。皆さんのこれまでのご協力に心から感謝申し上げる。